(2)ガス警報器の開発・販売・普及拡大による事故防止効果
ガス漏れ警報器(以下ガス警報器と呼称)は、当初、液化石油ガス(以下LPガスと呼称)のガス漏れ・爆発防止対策として開発されたLPガス用警報器が昭和44(1969)年から販売され、都市ガス用警報器は昭和55(1980)年から、大手3社(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス)が販売を開始し、その後、全国の都市ガス事業各社が採用し、販売をすることになりました。
この結果、旧型ガス栓、旧型ガス機器など、使用先の潜在的な事故予備軍の早期発見で事故予防対策に大いに貢献したのです。
その後、誤報対策の技術開発や新規需要のニーズに対する技術開発が進み、CO中毒のための検知器や火災防止用の複合型警報器なども開発され、利用されています。
①LPガス用警報器の開発経緯
昭和27(1952)年、日本で初めて石油産業からの副産物として、LPガスが製造され、簡易なボンベ容器による消費者への販売が開始されました。
当初は、LPガス用としてのガス機器、供給設備は現場対応という、間に合わせの状態でしたが、「ガスエネルギーは文化的な生活」ということで、各地で熱源として普及が進みました。
都市ガスのように導管が敷設されていない地域や、郊外・山間部などに簡易な戸別ボンベ供給が可能になり、並行して供給体制や供給設備なども整備され、急速に需要家数が増えたのです。
昭和30(1955)年末の需要家数は40数万件でしたが、昭和63(1988)には2350万件となり、当時の都市ガス需要家数に並ぶ状況になりました。
ちなみに平成30(2018)年には2300万件、都市ガス需要家数が約3000万件というデータが出ています。
一方、需要家数の増加に伴い、需要家先での諸々の原因によるLPガスによる排気ガス中毒やLPガス漏れによる爆発の事故が多発してきました。LPガスは、都市ガスと異なり、空気より比重が重いため、何らかの原因でLPガスが漏れると、屋内の下方にたまり、ガス爆発を起こしやすい特性があります。この爆発防止のための手段として、漏れたLPガスを早期に知らせて、事故を未然に防止するガス警報器の必要性が出てきたため、警報器メーカー各社では、その開発研究を進め、そのための販売強化が進められたのです。
昭和44(1969)年、家庭用LPガス警報器が開発され、販売されるようになりました。
②行政側への働きかけとLPガス業界向け販売
昭和45(1970)年ごろ、LPガスの需要家数は1500万件に急成長していましたが、当時は、爆発事故や中毒事故が増加しており、このための対策としてLPガス用警報器の普及が望まれていました。
この事故の発生状況をみて、LPガス販売事業者、ガス警報器メーカーなど、業界の幹部が行政側からの支援を依頼するため、当時の通産省に強く働きかけを行いました。その結果として、昭和45(1970)年、「一般消費者用液化石油ガス漏れ警報器検定制度」が公的機関により制定されることになり、LPガス用警報器の販売促進が図られるになりました。
当時、多発していたLPガスのガス漏れによる爆発対策としてLPガス用警報器の販売が促進され、設置数が増加し、事故防止に貢献しました。
それは、国や地方の行政側の支援や販売者の日本LPガス連合会や諸関係団体・消費者団体などの協力の下で、本格的な販売・普及が図られたからです。
③都市ガス業界向け販売
大手都市ガス事業者では、ガス漏れを微量漏洩で探知できるポータブルガス探知器やガス漏れ警報器は、都市ガスの事故防止上、有効と認識されていました。
そのため、都市ガス業界では、13種類の都市ガスに対応することの必要性や誤報対策も含めた品質確保のため「都市ガス警報器検定制度」をスタートさせました。同時に、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス大手3社では、既存のガス設備・ガス機器からのガス漏れ対策の一環として、都市ガス警報器の販売・設置有効と認識され、販売が開始され、今日に至っています。
都市ガス事業者各社では、事故が発生しやすい旧型カランや旧型機器が存在していたので、ガス漏れの情報を早期に発見される事例が数多くありました。
また、当時の東京ガス管内では、浴室内風呂釜や大型湯沸器の排気筒設備不備によるCOガス中毒が多発していたため、COも検知できる複合型警報器を販売してCO中毒事故防止を図りました。その後、さらにガス警報器の製品改良が進み、品質向上の進化は続いています。
④静岡駅前地下街爆発事故との関連
昭和55(1980)年8月、静岡駅前地下街のガス爆発が発生し、死者20名、負傷者192名の大事故が発生しました。
原因は一次的には地下から発生したメタンガスの小爆発により都市ガス管が破壊され、その後漏洩した都市ガスに引火し、二次的な大爆発となり、大惨事を引き起こしたものです。
この事故をきっかけに、商業用や工業用を含め、大規模建物などに対する徹底的な再発防止策が講じられました。
このため、全国の地下街、地下室、超高層建物、大中規模建物、共同建物などに対する保安規制が強化されました。
このうち、自治体が指定する特定地下街、特定地下室、超高層建物、特定大規模建物に関してはガス警報器の位置付けが明確化され、集中監視型ガス漏れ警報設備(単体でなくガス遮断弁を含むシステム)の義務付けが行われるようになりました。
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