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【第4章】ガス機器の事故多発時代(第3回)(昭和30(1955)~50(1975)年代)

③CO中毒を起こす対象機器と給排気処理対策の実態

 

 CO中毒事故を起こす機器は、ガス風呂釜と大型湯沸器、小形湯沸器・ストーブでした。

そのうちの風呂釜と大型湯沸器とでは機器の成り立ちが異なります。

 

 

風呂釜関連機器について

 前述のとおり、日本と外国では風呂の使い方が違います。

 

日本には昔から風呂に入る文化があり、外国はシャワーですませるという文化です。

日本の風呂の歴史は古く、全国各地いろいろな入浴の仕方がありました。銭湯などの大衆向け共同浴場も古くからありました。

 

 そして日本の近代化に伴い、家庭内で風呂釜を使う浴室風景が標準になり、大衆的な銭湯などの共同浴場から、内湯風呂の時代に変わってきたのです。

 

 特に、ガス機器の排気筒を付ける煙突業者と、ガス風呂釜を販売・設置する業者とはうまく連携できていませんでした。

 

排気筒材料の品質も粗悪なものが多く、ブリキ製や樹脂塗装製が主であり、安いけれども腐食しやすいため、事故の潜在的な原因にもなっていました。

今では、標準になっているステンレス製の排気筒は高いと思われて普及していませんでした。

ブリキ製は安いけれども腐食しやすく、問題が出ていました。

 

 このように、機器本体と給排気処理が一体になっていない風呂釜が、流通・販売されていたのです。

 

こういう背景が、風呂釜の給排気設備不備による事故の一因になっていました。

 

 

④燃料と煙突に関する歴史的な背景

 

 昔の風呂釜の燃料は薪や石炭であったので、煙が出るため、煙突は必ず取り付けてありました。

 

一方、都市ガスは無色、無臭(後で臭いをつけました)ですから煙が見えません。

ガス風呂の場合は煙が見えないので、販売者や設備の関係者は煙突はいらないと錯覚してしまい、排気処理の重要さがわからないままに、各家庭に機器本体だけを販売・設置したものと思われるのです。

 

 当時のガス風呂釜の広告やカタログ、説明書には「排気筒のない」場面の絵や写真がありました。

(図-1 風呂釜排気筒不備の例)

 

 

⑤ガス機器の建物内設置に関する問題点

 

 近年では住宅内の空調機器、ガス機器、その他の住宅設備は「ビルトイン」といって、建物の設計段階で図面上に記入されていますが、昭和40(1965)年頃は、建物が先に作られ、設備機器は後で取り付けるというのが一般的でした。

 

 当時、ガス機器は使用者の財産だという考え方が主流で、建築者は、ガス機器の給排気設備は使用者が管理すべきものとしていました。

したがって、ガス機器の新規設置の際、給排気設備には建築者は関与せず、設備を担当するものが対応すべきと考えられていました。

 

 本来は、建築者が設備を含めて建物管理すべきものでしたが、ガス機器の設置に関する部分は設備業者や都市ガス事業者の責任範囲と思われていたのです。

ガス使用者は、設備が不備であっても、安全性がわからずに使っていたため、事故になった事例が多くありました。

 

本来、建物にガス機器を取り付けるには、「都市ガス事業者」「建築・設備業者」「ガス機器メーカー」の三者が関連しています。

この連携が重要であったことは、後日、都市ガス事業者が不良設備改善の対策をしているときにわかったのです。

 

 そこで日本ガス協会所属の大手都市ガス事業者が中心となり、日本住宅公団や建設業界、設備業界、ガス機器工業会などの関連団体との連携を深めていきました。

 

建築設計をする時点から、ガス設備計画を組み込むように、都市ガス事業者が積極的に話し合った結果、ようやくガス機器を安全に使えるようなシステムになったのです。

 

具体的には、都市ガス業界が「ガス機器の設置基準及び実務指針」を昭和58(1983)年に作成し、日本ガス機器検査協会で出版、その本を建設業界、建築設備業界。ガス機器メーカー団体、使用者向けなどに広くPRしたのです。

 

 

⑥ガス事業法とガス機器の保安責任について

 

 前述のとおり、大昔から、ライフラインである火の取り扱いと給気・排気は使用者個人の責任であるという文化がありました。

しかし、人類の進化、技術の進歩、人間社会の構成上の変化などで、熱エネルギーの取り扱いが個人だけでなく、企業と使用者との役割分担の点で不明確になってきました。

 

欧米など諸外国の例では、ガス機器の保安に対して、都市ガス事業者と使用者責任との役割がはっきりしていると言われます。財産の所有者には保安責任があるという「権利と義務」思想が徹底しているのです。

 

 しかし、日本社会では、長い歴史からくる儒教の影響や社会慣習といったものから、個人の所有するガス機器の保安責任はあいまいになりがちです。

ガス機器を所有する人が少ない時代には、その商品の安全管理は個人の責任であることが、社会通念でした。

 

 しかし、文明が発達して近代化が進むにつれて、商品の安全管理は、それを供給する会社の責任でもあるという社会通念になってきました。

ガス事業法では、ガス機器の所有者は、都市ガスの利用方法に関しては不慣れであるため、「安全周知」によって、専門家である都市ガス事業者が安全を確保すべきであるとなっています。

 

 

 ガス事業法の中では、都市ガス事業者に対し、ガス機器に関する「調査義務」と「安全周知」という保安責任が課されています。

 

したがって、使用者が所有するガス機器の給排気設備不備が原因で事故が起きても、都市ガス事業者には、消費者への「安全周知」の観点から、事故を起こさせないという保安責任があるのです。

 

ガス機器が普及していなかった頃には、事故は使用者の責任として表面には出なかったのですが、近年ではガス機器が普及し事故が増えるにつれて、人命や財産に影響するため社会問題となりました。

 

ガス機器による事故が発生し、人の生命や財産まで影響を及ぼすことになると、都市ガス事業者をはじめ、ガス機器販売会社・ガス機器メーカーは法令の責任範囲だけでなく道義上の責任も問われる状況になったと認識することが肝要です。

 

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