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【第3章】ガス機器の黎明期(第4回)

2.黎明期のガス機器の安全対策

 

 

ガス風呂釜以外は、ガス灯も含めて各種ガス機器は当初、すべて欧米からの輸入品でした。欧米では、基本的にガス機器使用者が安全に責任を持つのが当たり前でした。普通に使っていて事故が起きると、都市ガス事業者やガス機器メーカーに責任はなく、使用者の自己責任というのが欧米の考え方です。

この考え方を受けて、黎明期のガス機器には、ガス機器の使い方が悪くても事故は起きないという安全装置は付いていませんでした。日本固有のガス風呂釜についても、従来の薪、石炭等の風呂焚口に、ガス風呂バーナーを入れるという考え方だったので、特に安全装置は付いていませんでした

 

都市ガス(当初は石炭ガス系だった)の中に含まれているCOによる自殺事故は時々起きていましたが、それでも都市ガス事故があまり発生しなかったのは、当時のガス機器使用者が少なく、限られた人だったことと、昔の木造家屋は換気も良く、酸素不足によるCO中毒のリスクが少なかったからだと考えられます。

 

昭和の時代に入ると、ほぼすべてのガス機器が国産化され、少しずつ普及・拡大が進んでいましたが、前述のように換気の良い日本個有の木造家屋だったため、後日、社会問題となるような都市ガスによる死亡事故はあまり多くありませんでした。ただ、鉄筋コンクリート造りなどの気密性の高い住空間でつかっていたら、COガス中毒を起こすかもしれなかったケースもありました。

 

機種別に、その内容について例示します。

 

1. 風呂釜について

 

前述したように、内風呂は日本固有の文化であり、ガス風呂は薪や石炭等から都市ガスに燃料が入れ替わったものです。昔の風呂はまず

風呂桶製造者(通称 風呂桶職人)が風呂桶を作って風呂場に取付、焚口で薪や石炭などを燃やす方法でした。そのため、煙突(排気筒)は状況によって、取り付けたり、取り付けなかったりしていたのです。( 図-1 早沸釜と箱型風呂 )

 

その煙突(排気筒)は、風呂桶製造者でなく、煙突業者(当時の専業職人)が取り付けていました。そういう状況ですから、燃料を薪・石炭から都市ガスに変えただけなので、ガス風呂釜は煙が出ないという感覚があり、煙突(排気筒)がついているものと、ついていないものが混在していたのです。

 

2. 湯沸器について

 

当初、ガス大型湯沸器は輸入されていました。これには排気筒型、BF型、屋外設置型などと呼ばれる型がありましたが、設置基準通り取り付けてあれば、換気不良によるガス中毒事故の心配はありませんでした。しかし、日本で取り付けたときに、給排気設備など設置されないことが多く、CO中毒事故が起きたりしていました。

一方、小型湯沸器は食器の洗浄などのために短時間で小量のお湯を出せるという、日本独特の機器で、主に台所で使われていました。

台所の換気扇を使用しないで長時間使用すると、空気中の酸素が足りなくなり、いわゆる酸欠による不完全燃焼状態となり、COが出てきて、人体に大きく影響する危険性がありました。

3.暖房機器について

 

 ガス暖房機器も、当初は外国からの輸入品でした。外国では薪や石炭等を燃料とする暖炉には専用の煙突がついていたので、そこにガス暖房機器を取り付けても煙突はそのまま機能します。

 一方、国産のガス暖房機器は当初、火鉢、炬燵などの代わりとして発展したため、室内の酸素を使って燃やす小型の開放型機器でした。

昔の木造家屋は比較的換気が良かったのであまり問題は起きませんでした。しかし、近年の木造家屋や集合住宅などは気密性が良く、時々窓を開けるなどの換気をせずに長時間使うと、酸欠による不完全燃焼からCO中毒事故を起こす危険性をはらんでいました。

 

4.接続具について

 

 ガス栓と各種機器を結ぶ接続具については、赤・青ゴム管が多く使わ

れていました。この製品の問題点は、ゴム管の老朽化によるひび割れや、

ガス栓との装着不良による外れなどの現象があり、都市ガス(石炭ガス

系のガス)の漏れによるCOガス中毒が発生していました。

 

 

 

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