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【第2章】都市ガス事業と保安の歴史(第1回)

あらまし

 

 

 

現在、都市ガスは世界の文明国で熱エネルギー源として使われています。
が、初めて石炭ガスが発明され、燃やされたのは17世紀初頭でした。
19世紀には、夜の街を明るく照らすガス灯に使うために、都市ガス事業が起こりました。
イギリスで起こった都市ガス事業は世界中に広がり、60年の時を経て明治の日本でも都市ガス事業が始まりました。

 

 

1.世界の都市ガス事業の創業

①石炭ガスの発明から都市ガス事業へ

 1609年、ベルギーの科学者ヘルモントが石炭を蒸し焼き(乾留)してエネルギー源にしたのが都市ガスの始まりです。
彼は、ギリシャ語で混沌を意味する「CHAOS(カオス)」から、これを発音の似ている「GAS」と名づけました。
日本では、江戸時代が始まったころのことでした。

 その後もヨーロッパの各国で都市ガスの研究は続けられ、1792年、イギリスでウイリアム・ムルドックが照明用のガス灯として都市ガスを実用化することに成功しました。
月のない夜、真っ暗だった街路にガス灯が点灯した時の人々の驚きと喜びはどれほどだったことでしょうか。
ムルドックはもともとジェイムス・ワットが経営する工場の蒸気機関技師でしたが、これで「ガス灯の父」と呼ばれるようになったのです。

 

その後、ヨーロッパやアメリカで都市ガスの研究はさらに進み、1812年、イギリスで世界最初の都市ガス会社が設立され、都市ガスはフランス、アメリカ、オーストラリアなどに広がっていきました。
都市ガスは当初、照明用のガス灯として使われましたが、その後、炊事用や暖房用の熱源にもなっていきました。
日本では明治5(1872)年に横浜に初めての都市ガス会社ができて、ガス灯がともりました。

 

石炭ガスの発明と各国の都市ガス事業創業

年代 国別 発明者など
1609年
(慶長14年)
ベルギー 化学者ヘルモントが石炭を乾留して、可燃性ガスを取り出す
1792年
(寛政4年)
イギリス
(スコットランド)
ウイリアム・ムルドックが石炭ガスでガス灯を開発「ガス灯の父」と呼ばれる
1812年
(文化9年)
イギリス 世界初の都市ガス会社設立(ロンドン・アンド・ウエストミンスター・コーク会社)
1815年
(文化12年)
フランス パリで都市ガス会社設立
1816年
(文化13年)
アメリカ ボルチモア・ガスライト会社設立
1841年
(天保12年)
オーストラリア シドニーガス会社設立
1872年
(明治5年)
日本 横浜瓦斯灯会社を設立

 

②都市ガスの利用形態

 この様に都市ガスはまず照明用のガス灯として使われ始めました。
ランプや、ろうそくの炎しかなかった当時の人々の目には、ガス灯は文明の象徴のように見えたことでしょう。
何しろそれまでは夜の屋外は真っ暗で、手元の明かりだけで夜道を照らしながら歩くのは心細いことでしたから、まさしく文明開化の光だったと思われます。
そしてその後、都市ガスは次第に煮炊き用として台所の熱源として利用されるようになったのです。

 

③創業当時の状況

この様に19世紀にイギリスで都市ガス事業が始まりましたが、このころから都市ガスの成分であるCOの毒性は話題になっていました。
まだ都市ガスが普及していなかった頃でしたが、都市ガスを使用するときの注意事項は理解されていたようです。
第1章で紹介した、当時のガス自殺を題材に使った映画「ライムライト」に登場する医師の発言からも考えられるのです。
また、当時、都市ガスは使用者個人の責任で使うべきであるという思想があったと思われます。

 

 

 

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