Ⅰ 機種別安全機器の近代化の歴史
(3)ガス暖房機器(ガスストーブ)
昭和32(1957)年に、ドイツ人のシュバンクが開発したセラミックバーナーを使用したストーブ、シュバンク式ガス赤外線ストーブの第1号が誕生しました。
このストーブは、天井吊り下げ型など、多彩な使い方ができ、今までの常識を覆す商品でした。
はじめは駅や工場などの暖房に使われていましたが、昭和34(1959)年には、家庭でも使えるセラミックプレートを使用したシュバンク式ガス赤外線ストーブが商品化されました。
シュバンク式ガス赤外線ストーブが初めて発売された当初、機器メーカーはセラミックプレートを輸入して、シュバンク式ガス赤外線ストーブを国内で生産していました。そのため、生産台数は限られていましたが、次第にセラミックプレートそのものも国内で製造できるようになり、生産台数を増やすことができました。結果として、シュバンク式ガス赤外線ストーブは家庭用にまで広まりました。
昭和44(1969)年には、FF型(強制給排気型)暖房機が誕生しました。
これは、ガス機器として、初めて本格的に電気を使った強制給排気型の高性能機器で、三菱電機から発売され、大きな反響を呼びました。
それ以降、給排気処理を含めた燃焼機能にも、電気の機能を活用するなど、新型ガス機器の開発する観点からも、ガス機器開発の新段階に入りました。
FF型温風暖房機は、家庭用の小型タイプとして普及していきましたが、その後公共の建物、学校、集合住宅などに使われるようになりました。
昭和53(1978)年には、簡便で比較的安価な開放型小型ストーブとして、石油ファンヒーターが市場に出回り始め、昭和55(1980)年には100万台
程度が売れていました。これを見て、石油より、安全で使いやすい都市ガスを燃料としたガスファンヒーターを開発し、昭和55(1980)年に商品化されました。
ガスファンヒーターは、ガスを燃やすことで発生した熱を内蔵ファンで室内に吹き出して温めます。室内の空気でガスを燃やし、そのまま室内で利用するため、当初から不完全燃焼防止装置をはじめとするいろいろな安全機能を内蔵していました。
ガスファンヒーターは、石油ファンヒーターに比べて臭いが少なく、燃料補給の手間がない上にすぐに温風がでるといった点で好評であり、使い勝手がいいので普及も促進し、家庭用ガス暖房機主流として販売されていました。
さらにガスファンヒーターは、比例制御による温度調整、空気清浄などの付加機能を追加し、さらなる進化を続けています。ガスの暖房機器としては、ガスファンヒーター、ガス赤外線ストーブ、ガスFF暖房機、温水床暖房方式とありますが、既存住宅用としては、ガスフアンヒーターが主流でした。
ガスファンヒーターの特長は電源を入れると、すぐに暖風が出ること、石油ファンヒーターと異なり燃料補給の手間がないこと、そして、次の7つの安全機能を搭載していることです。
7つの安全機能は,下記のとおりです。
①立ち消え安全装置
②不完全燃焼防止装置
③停電時安全装置
④転倒時ガス遮断装置
⑤過電流防止装置
⑥過熱防止装置
⑦自動消火機能
この7つの安全機能は、日本で販売されている全機種に標準搭載されています。
(4)ガス機器による風呂・給湯・暖房機能のトータルシステム
誕生の経緯
昭和30年代までは、風呂、給湯、暖房の機能は、各々別々のガス機器を使っていました。戦後、駐留軍でよく使用されていた大型湯沸器を使って、そのお湯を風呂用に活用していたのです。
日本固有の風呂釜と欧米から来た湯沸器をガス機器として初めて一体化させたのは、日本住宅公団と日本ガス協会が共同開発したBF型風呂釜でありま
す。
BF型風呂釜は、昭和40(1965)年に風呂の水を沸かすだけのものが、最初に開発されました。
その後、昭和43(1968)年に、給湯とシャワー機能を持ったBF-SRという機器が開発されました。これが、日本で最初の風呂釜と湯沸器との一体化されたガス機器の登場でした。一方、昭和45(1970)年には、大型湯沸器の発展形として、湯沸機能と暖房機能を有する2缶2水路型給湯暖房機が開発されました。
風呂釜・大型給湯器・大型暖房機の給排気方式は、単独排気筒型―BF型(給排気バランス型)―FE型(強制排気型)、FF型(強制給排気型)と進化していきます。
昭和50(1975)年には、給排気設備不備によるCO中毒事故防止に対応した究極のガス機器、屋外設置式風呂釜が販売され、昭和53(1978)年には屋外設置式湯沸器がそれに続きました。
ガス機器の給排気方式一覧表
その後、風呂釜・大型湯沸器・大型暖房機器の大きな流れはますます進化し、一台の外置式のガス機器で、風呂・給湯・暖房の3つの機能をまかなうことができるシステムへと発展していきます。
これは、温水を利用して住まい全体を快適にする、ガストータルシステムです。部屋や暮らしに合わせて、自由なシステムプランが作れます。例えば、リビングには床暖房、浴室には給湯・追炊き・ミストサウナなどに機能が付き,さらに安全な厨房システムにより、住宅内は快適と安心で満たすことができます。
この理想的なガストータルシステムは、昭和40~50年代のガス死亡事故が多発した時代に、関連した業界全体が一体となり生まれた、将来を見据えたシステムであり、今日の住宅設計の基本になっています。
平成の時代になり、ガス暖房機器として、またエアコン(冷暖房機器)としても進化を続けてきました。平成2(1990)年には、温水式ガスエアコン(下図左)が出来ました。これはパワフルでスピーデイなガス暖房を生かした商品です。
平成9(1997)年には、世界初の吸収式ノンフロンタイプの家庭用ガスエアコンが発売されました。平成13(2001)年には、第11回省エネ大賞を受賞した、潜熱回収型給湯暖房機(下図右)が発売されました。
この様に、家庭用ガス機器は、風呂・給湯・床暖房含む暖房・乾燥などを一括して取り扱う外部設置型で安全な機器として発展してきたのです。
(5)厨房機器
昭和30(1955)年代に入り、住宅も近代化が進みました。ガスコンロも、昭和32(1957)年に、日本で初めての、自動点火(ヒーター)付きガステーブルコンロが登場しました。
昭和39(1964)年には、コンロ兼用グリル付きガスコンロ(下図左)が発売されるなど各種機器特性が向上したガス厨房機器が登場し始めました。昭和40年代になると、ガス厨房機器はさらに進化し、両面グリル付きテーブルコンロ圧電点火式ガスコンロ、ガス高速レンジ(下図右)などが続々登場しました。
昭和40年代後半からは、台所にもっと使いやすく、きれいで、豪華なシステムキッチンが登場しました。それにあわせて、ガス厨房機器もビルトインガスコンロ、ガスコンビネーションレンジなどの新機器が開発されていきました
昭和49(1974)年には、初めてセラミックプレートを使った、ガス赤外線グリル付きガステーブルが登場しました。この年には、電池で連続放電する点火機構を載せたガスコンロ(右図)も発売されました。この方式は、今も 点火方式として、広く使われています。
ガス厨房機器によるガス事故は、換気不良によるCO中毒は比較的少なく、誤使用によるもの、ガス消し忘れによる火事、てんぷら火災、火傷などのガス事故が多くなっています。昭和50年代末ごろから、誤使用ガス事故にならない安全装置付きガス厨房機器が、開発され始めました。
昭和59(1984)年には、立ち消え安全装置搭載ガスコンロが発売されました。
昭和60(1985)年には、業界初の、てんぷら火災防止温度センサー付きガステーブルが発売されるようになりました。
平成時代になると、厨房機器の誤使用防止安全装置は、さらに進化して、点火不良、過熱防止、てんぷら火災防止,つけっぱなし防止などの機能がとりつけられるようになりました。
平成16(2004)年には、次世代型ガスコンロとして、AC100V電源で動かし、温度表示や声でのお知らせ機能付きのコンロが発売になっています。(下図)