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【第7章】安全化策を講じたガス機器の近代化の実現(第1回)

あらまし

 

ガス機器に必要な要素は、大きく分けて4つあります。それは、

 

  1. ①機能性
  2. ②利便性
  3. ③経済性
  4. ④安全性

の4つです。

 

④の安全性は、特に意識しなくても、普通に使っていれば、絶対に中毒事故等のガス事故は起こさないといったことです。本章では、まず上記④の安全性についてポイントを絞り、機種別に詳説していきます。併せて①②についても述べていきます。
最後には、①~④の全てをクリアーした最新のガス機器システムについても紹介します。

 

機種別安全機器の近代化の歴史

この章では、ガス機器の機種別に安全機器の近代化の歴史を見ていきます。
ガス機器の進化は、業界関係者が一体となって、合理的な操作性も考慮したガス機器のハード面での安全化に取り組んできた努力の結果だといえます。

 

(1)ガス風呂釜

 

戦後、住宅不足の時代、昭和31(1956)年に日本住宅公団が、2万戸といわれた、膨大な鉄筋コンクリート造りの集合住宅建設を始めました。
手狭な各住宅に、昭和31(1956)年から入居が始まりました。
当時、日本住宅公団のガス風呂は、浴室内に内釜式木製浴槽を置き、煙突によって排気ガスを外に出す(CF式と称する)各戸別に煙突方式を採用していました。

 

集合住宅は気密性が高いため、木造住宅と異なり、換気には十分な注意が必要です。さらに、浴室内でお風呂を沸かす内釜式は、短時間にガスを沢山燃やすため、新鮮な空気もたくさん必要でした。そのため、給気、排気の処理に関する設計が悪いとガスCO中毒事故の危険性がありました。

 

その後、同じような、気密性が高く、給排気設備が良くない集合住宅が増えるにつれて、給排気設備不備が原因で、排気処理不足のCO中毒事故が多く発生し、ガス事故がマスコミなどにも取り上げられて、大きな社会問題になり、対策が急がれました。
再発防止対策として、既存の不良排気処理設備の改善と同時に、都市ガス業界、ガス機器メーカー業界とともに安全型新規機器の開発に取り組みました。
その結果、 昭和40(1965)年にBF型風呂釜(給気、排気処理を外部から取り入れるタイプ)が開発され、量産化されました。日本住宅公団では、その新製品の採用を正式決定し、住宅設計に組み込まれました。

 

 

さらに、全国の日本住宅公団のガス風呂釜は給排気設備の規格がバラバラだったので、ガス風呂釜規格を統一して、安全なガス風呂釜の普及拡大に貢献し、さらに、全国の公営住宅や民間の社宅などにも採用されるようになりました。

 

BF型ガス風呂釜は、公団住宅、新築マンションなど、広く普及しましたが、既設住宅では壁に穴を開ける必要があり、既設の集合住宅、戸建住宅の内風呂に、BF型風呂釜を付けることは、住宅を管理する人や住んでいる人達に抵抗があり、そのような住宅には、新規開発のBF型ガス風呂釜はあまり、普及しませんでした。そのため、既存のガス風呂釜全体でみると、給排気の不具合によるガスCO中毒事故はなかなか減らなかったのです。
しかし、後年、既存のCF型風呂釜の取替用として、上部壁貫通部に設けた給気・排気用の二重管式バランス型機器(BFDP型)が開発・販売されたことにより、安全型機器への取替が進みました。

 

昭和51(1976)年には、究極の給排気安全機器である新しいタイプの屋外設置式(RF型)ガス風呂釜が開発され、新規の戸建住宅や集合住にも多く設置されるようになりました。
現在の状況では、従来のBF型風呂釜時代から、屋外設置型ガス風呂釜の時代に変化してきています。
それらの結果として、近年、ガス風呂釜の給排気不良によるガスCO中毒事故の心配はほとんどなくなりました。

 

(2)ガス湯沸器

 

ガス湯沸器は、昭和30(1956)年代前半まで、相変わらず庶民の手の届かない高額商品でした。当時の大学卒の新入社員の初任給は、1万数千円でした、小型湯沸器は、ほとんどが1万円を越えており、機器の普及率は低い商品でした。

 

昭和31(1956)年から、の日本住宅公団の住戸には、ステンレス製の流し台と、小型湯沸器、浴室が、標準装備されていき、ガス湯沸器も、昭和35(1960)年から、本格的に普及拡大していきました。昭和36(1961)年ごろ、小型ガス湯沸器の生産は、年間約20万台でしたが、昭和39(1964)年には、その3倍以上の約70万台と急速に増えていきました。
小型ガス湯沸器の普及拡大に伴い、気密性の高い構造の住宅での換気不良によるガスCO中毒事故が増加するようになりました。

 

これらのガスCO中毒事故多発の状況を受け、昭和40年代に入ると、機器メーカー、大手都市ガス事業者、日本ガス協会、監督官庁等は対策に乗り出しました。特に機器メーカーは、激増するガス給排気の不備によるガスCO中毒事故防止のために、事故を起こさない新しい商品の開発・普及に取り組みました。
ガス機器の内部の制御や操作に、本格的に電気を使うことにより、安全性や機能性、利便性が、格段に向上し、今までにはなかったジャンルの機器も開発されていきました。

 

大型湯沸器は、昭和37(1962)年に、国産初のBF(バランスドフル―)型大型ガス湯沸器が発表されました。この機器は、部屋の空気を汚さず、しかも排気筒を設置する必要のない安全な湯沸器として注目を集めました。

 

安全なことで当時注目を集めたこのBF型ですが、壁貫通部には大きな給排気トップを必要とするなど、設置面での若干の課題を残していました。
そのため、雪の多い地域や、煙突の立ち上がりをとれない所で使用するために、電気式フアンモーターを使った、新しい機械排気システムの開発が始まりました。
昭和47(1972)年に、機器の上部に排気フアンを載せた強制排気(FE<フォースト・エキゾースト>)タイプが発売され、北海道地区を中心に普及し、壁貫通部の開口部面積を小さく抑えることが可能になりました。

 

昭和51(1976)年には、ガス暖房機器では既に商品化されていた強制給排気(FF<フォースト・フル―>)タイプが、ガス湯沸器にも登場しました。
さらに、昭和53(1978)年には、雨水対策を完備した、業界初の屋外式ガス給湯器が発売されました。

 

昭和54(1979)年には、今日のガス湯沸器の湯温コントロールのベースとなる、ガス比例制御機能を備えた屋外設置型の給湯器が発表されました。このシステムは、当時のガス機器の開発技術者の間では理想とされていたもので、業界に大きな反響を呼び起こしました。

 

 

昭和55(1980)年には、強制給気方式による省スペース型13号瞬間湯沸器が発表されました。

 

この機器は、デッドスペースとされていた集合住宅のパイプシャフトにも設置できるようコンパクトに設計されており、ガスの配管や元栓のあるところにガス機器を設置するという、思い切った発想から成り立っていました。なお、今日の集合住宅では、外置型ガス給湯器がパイプシャフト内設置の主流となっています。

 

昭和60(1985)年には、業界初の全自動ガス風呂湯沸器が登場しました。
これにより、ワンタッチで、希望の時間に、指定の湯温・湯量などでお風呂が沸かせるようになりました。安全性を含めて、すべての必要な機能が自動で行われるようになり、ガス風呂給湯器の完成版が出来上がりました。
この機器は、現在の新設住宅での浴室給湯器(湯沸機能+追炊き機能付き)の主流をなしています。

 

 

一方、小型湯沸器は、昭和30年代までは四角い形をしたものとは異なる、空焚き防止装置のついた、円筒型の湯沸器が全国各地で使われていました。

 

昭和40(1965)年に、初めて圧電式自動点火装置を備えた小型4号ガス湯沸器が発売されました。

 

 

湯沸器のパイロットつまみと圧電式自動点火装置が連動しており、操作上、点火しやすい構造になったのです。
これにより、小型湯沸し器の普及拡大が進んだのですが、既存の住宅では、長時間使用により、室内の給気・排気処理の換気不良によるガスCO中毒事故が急速に多発するようになりました。
このため、小型湯沸器を使用する際は、消費者に対し、短時間使用厳守と、換気扇使用厳守というソフト面での安全周知を行っていました。

 

 

しかし、抜本的な対策はハード面での対応であり、それは、ガス機器側に異常時には安全装置が作動するという機構が必要なのです。
この対策として、昭和58(1983)年になり、ようやく不完全燃焼防止装置が搭載された最初の小型ガス瞬間湯沸器が登場しました。

 

この機器には、押しボタン式の点火装置や、レバー式のワンタッチ給湯、シャワーノズルの標準搭載など、様々な機能が採用されていました。この、不完全燃焼防止付小型湯沸の普及につれ小型湯沸器によるCO中毒事故は、減少していきました。