都市ガスはどのようにして安全になったのか?
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スが自殺の手段として使われていたことが、1952年にチャップリン の映画『ライムライト』などに見ることができます。 ガスの臭いのする若いバレリーナの部屋に、チャップリン演じる老優カ ルヴェロ(主人公)が入って行き、生活苦で自殺しようとしていたバレリ ーナのテリーを救うという話ですが、当時はガス自殺が話題になってい たのです。 『ライムライト』では、娘のテリー(バレリーナ)が、室内でガス自殺を 図りますが、カルヴェロ(主人公)がガスの臭いに気が付き、テリーを室 外に運び出し、医者のところへ連れていきます。 「医者のガス栓は閉めたのかね」の一言で、主人公は急いで戻り、ガス 栓を閉めるのですが、この一連のストーリーは、その後のガス事故対策 を表現しています。 また、この『ライムライト』の8年ほど前に公開された映画『ガス灯』 (米国版・監督ジョージ・キューカー、主演イングリット・バーグマン、 シャルル・ボワイエ)にも都市ガスが使われています。 これは、CO中毒の話ではなく、ガス設備の管理をトリックに使った映 画です。『ガス灯』では、住宅用建物の外部から都市ガスの元栓を操作 して、住宅室内の照明用ガス灯の炎を大きくしたり小さくしたりして、 主人公の不安な心理をあおるのに使われています。 外の都市ガス元栓を開けたり閉めたりの操作は、本来、ガス会社の職員の 仕事であり、素人にはできませんが、ドラマの中では、犯罪の手段として 使われたのです。 これらの現象は、都市ガスが他のライフラインと違い、火の扱いや排気の 処置を誤るとCO中毒や爆発につながり、人の生命・財産に直接影響をす ることがわかるエピソードです。このため、ガスは特別の注意が必要なエ ネルギーであると言えるのです。 昭和30年代から、日本経済が急成長 をとげて国民の購買意欲が向上し、ガ ス機器も広く普及してきました。しか し、ガス機器を使う環境が良くなかっ たため、ガス中毒や爆発、火災が目立 つようになりました。 都市ガスの使用者が注意事項を守らず、 3. 戦後の事故多発時代から近代化へ

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