都市ガスはどのようにして安全になったのか?
6/108

都市ガス中の一酸化炭素(CO)と換気の問題 17世紀に西欧で石炭の乾留(蒸し焼き)による石炭ガスという燃料が 発明されました。19世紀になると、英国で石炭ガスを原料とする本格 的な都市ガス事業が始まり、上下水道などとともに、ライフラインの一 部としてガスが位置付けられるようになりました。 しかし、火の不始末による火災のリスクと排気処理の 問題は、当時から人類共通の課題だったことに変わり はありません。 石炭ガスには、もともと可燃性の一酸化炭素という成 分が含まれています。これが人体に入ると血液中のヘ モグロビンと結合して、酸素の補給ができなくなり、CO中毒を起こしま す。そこから、ガス機器の排気処理を含め、換気の問題が出てきました。 CO中毒には、供給されるガスの漏洩と自殺者志望者の故意のガス放出 によるCO中毒、ガス機器の不完全燃焼による燃焼排気CO中毒の2種 類の問題があります。 このように都市ガスには当初からCO中毒の問題が内在していたのです が、当時の英国ではガスを利用する人は比較的富裕層で人数もすくなか ったのと、個人の使用責任が明確な国柄ゆえ、事故が起きても大きな問題 にはなりませんでした。安全の問題は使用者の責任として処理されてい たようです。 日本でも明治時代から大正、昭和20年代くらいまでは、都市ガスを利用 する人は主として富裕層だったので、使う人も少なく、ガス機器もあまり 普及していませんでした。また、気密性が低い木造住宅が多かったため、 事故も少なかったのです。 明治時代以降、炊事用の熱源は、薪・木炭から徐々に都市ガスに変わり、 今では上下水道・電気・通信・鉄道などとともにライフラインとして大切 な役割を担っています。中でも、室内で火を取り扱う際の都市ガスの安全 性と排気の処理は大変重要になってきています。 都市ガスをはじめとする熱エネルギーは「取り扱いを誤ると危険」の思想 があり、使用者個人が注意しなければならないという原則は昔も今も変 わらないのです。 2. 都市ガスの安全対策

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る