都市ガスはどのようにして安全になったのか?
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⑥ ガス事業法とガス機器の保安責任について たのです。 ガス使用者は、設備が不備であっても、安全性がわからずに使用していた ため、事故になった事例が多くありました。 本来、建物にガス機器を取り付けるには、「都市ガス事業者」「建築・設備 業者」「ガス機器メーカー」の三者が関連しています。 この連携が重要であったことは、後日、都市ガス事業者が不良設備改善の 対策をしているときにわかったのです。 そこで日本ガス協会所属の大手都市ガス事業者が中心となり、日本住宅 公団や建設業界、設備業界、ガス機器工業会などの関連団体との連携を深 めていきました。 建築設計をする時点から、ガス設備計画を組み込むように、都市ガス事業 者が積極的に話し合った結果、ようやくガス機器を安全に使えるような システムになったのです。 具体的には、都市ガス業界が「ガス機器の設置基準及び実務指針」を昭和 58(1983)年に作成し、日本ガス機器検査協会で出版、その本を建 設業界、建築設備業界。ガス機器メーカー団体、使用者向けなどに広くP Rしたのです。 前述のとおり、大昔から、ラ イフラインである火の取り扱 いと給気・排気は使用者個人 の責任であるという文化があ りました。 しかし、人類の進化、技術の 進歩、人間社会の構成上の変 化などで、熱エネルギーの取 り扱いが個人だけでなく、企 業と使用者との役割分担の点で不明確になってきました。 欧米など諸外国の例では、ガス機器の保安に対して、都市ガス事業者と使 用者責任との役割がはっきりしていると言われます。財産の所有者には 保安責任があるという「権利と義務」思想が徹底しているのです。 しかし、日本社会では、長い歴史からくる儒教の影響や社会慣習といった ものから、個人の所有するガス機器の保安責任はあいまいになりがちで す。 ガス機器を所有する人が少ない時代には、その商品の安全管理は個人の

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