都市ガスはどのようにして安全になったのか?
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なければならなかったのですが、なかなか趣旨が伝わりませんでした。 当時、住宅内のガス機器は、建物を建てた後に取り付けるのが普通でした。 まだその頃に多くを占めていた従来の木造住宅では、ガス機器の給気と 排気が自然の換気でまかなえたので、特に使用者への配慮は必要ありま せんでした。 しかし、経済の向上や近代化に伴い鉄筋系の建物が増え、木造住宅も含め、 気密性の高い構造になってきました。 建築業者や設備業者に対しては、大型機器である湯沸器や風呂釜の排気 処理のためには排気筒が必須であることを周知・指導しなければなりま せん。 また室内で暖房機器や小形湯沸器を使う一般の利用者に対しても、設置 方法や使用方法に関して周知・PRすることが必要になってきたのです。 使用者に対しては、建物の気密性が高くなっているので、換気に対する一 層の安全周知が必要だったにもかかわらず、ガス機器を長時間使う時の 周知事項を徹底することができず、不完全燃焼による中毒事故が起きる 状況になってきたのです。 都市ガス事業者は都市ガスの 使用者に対し、風呂釜・湯沸 器など大型機器の給排気設備 を安全のため正しく設置する ようお願いしていました。 特に問題のある設備を持って いる家に対しては、改善の具 体的な方法を提案し、きめ細 かなお願いを繰り返していま した。 しかし、大部分の使用者や建 物の所有者は改修費用負担に抵抗があり、都市ガス事業者が、事故を未然 に防止するため、主体的に改善せざるを得ないのが実態でした。 ガス事故が起きるたびに、行政側から都市ガス事業者に対し、再発防止の ための安全巡回活動をするよう繰り返し要請が出されました。 しかし、使用者の安全を「周知」という「ソフト対策」だけに頼るのには 限界があり、徹底できないという悩みがありました。 このため、都市ガス事業者としては、「ソフト対策」だけではなく「ハー ド対策」を主とした保安政策に変える必要性があったのです。

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