都市ガスはどのようにして安全になったのか?
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後年、昭和30年代、住宅公団の気密性の高い鉄筋コンクリート造りのア パートや民間のアパートが増加して排気ガス中毒が多発する現象が起き ましたが、都市ガス業界でも「煙突はいらない」という誤解が一部残って いたのです。 もう1つは、ガス風呂の製造・流通・販売システムの問題です。 薪・石炭風呂の場合は、風呂桶製造業者が風呂桶・風呂釜の一体品を作り、 それを浴室内に設置して、その後、煙突業者が煙突を取り付けていました。 一方、ガス風呂の場合は、ガス風呂販売会社が、風呂桶にガス風呂釜を取 り付けたものをガス風呂として、浴室内に取り付けていました。 本来、風呂桶、風呂釜、バーナーの燃焼部を含めた本体部分と排気設備は 一体で設置すべき商品なのですが、実態としては別々に設置されていま した。 ガス風呂販売会社はガス風呂には煙突はいらないという認識だったので、 ガス風呂の設置には煙突業者は必ずしも係わっていませんでした。 このように東京ガスは自社でガス風呂釜の製造・販売に関与せず、「東京 ガス指定店制度」を設けて、「日本瓦斯風呂商会」の傘下の製造者・販売 店に風呂釜の設置など依頼し、東京ガスが製造・販売・流通などに直接関 与することはしていませんでした。 しかし、その流れの中には、浴室内設置のガス風呂釜には保安上重要な煙 突設置業者の位置づけがなく、建前として、販売店業者、消費者にお任せ の状態だったのです。 この結果として、風呂釜を設置する際の給排気設備完備は少なく、煙突 (排気筒)なし設備やあっても不備な設備が存在し、ガス風呂釜による CO中毒の予備軍になったのです。

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